
資産運用と一口に言っても株式投資やFX、国債に不動産投資など、様々な種類があります。そのため、これから資産運用を始めようとしている人の中には、どの運用方法を選択すればいいか分からない人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、資産運用をまだ始めていない方にも分かりやすく資産運用の種類と特徴を比較していきます。
資産運用の種類による違い
資産運用と聞くと、「まとまった資金が必要」「リスクが高い」などの印象を抱いている人も多いかもしれませんが、そのようなことはありません。
資産運用の種類によっては、少額から運用を行うことができるものやリスクを抑えながら運用を行うことができるものもあります。
必要投資額、リスクとリターンが資産運用の種類によってどのように違うのか見ていきましょう。
必要投資額による比較
資産運用には興味があるものの、年代によっては住居の購入費用、子供の進学資金などで、資産運用にまとまった資金をつぎ込むことができない人も多いです。
しかし、資産運用を行うにあたって必ずしもある程度のまとまった資金が必要になるわけではありません。1万円未満の資金でできる資産運用は以下の通りです。
【資金1万円未満】
- 預貯金
- 投資信託
- 株式投資(ミニ株・単元未満株など)
- FX
給与を金融機関に預けるのが当たり前になっているため、「資産運用を行っている」という自覚がないかもしれませんが、預貯金も資産運用の1つです。しかも、1円から運用できるため、手軽に始めることができる資産運用と言えます。
投資信託 や株式投資も資産運用としてメジャーな運用方法ですが、投資信託は100円から始めることができます。また、株式投資も「株価×単元」と運用下限が決まっているものの、ミニ株(10分の1)や単元未満株(100分の1)という単元以下の取引を選択することで、1万円未満の運用が可能です。
FXもメジャーな運用方法ですが、取引単位が低い業者を選ぶことで、数100円から取引を行うことができます。続いて1万円以上の資金が必要な資産運用は以下の通りです。
【資金1万円以上】
- 債券
- ソーシャルレンディング
- 株式投資(一般取引)
- 不動産投資
国債や社債などの債権は、必要投資額が個人向け国債は1万円、個人向け社債は10万円や100万円単位と企業によって異なっています。ソーシャルレンディング は、事業者によって異なりますが、1万円以上が一般的です。
通常の株式投資 は、上場銘柄3800銘柄中50銘柄程度は1万円以下での取引が可能ですが、中には数100万円が必要となる銘柄もあります。不動産投資は、中古戸建てなどの場合には数100万円で始めることができるケースもありますが、ほとんどのケースで数1,000万円必要となるでしょう。
リスクとリターンによる比較
資産運用を行う目的は人それぞれです。例えば、リスクを負ってでも大きな利益を得たいという人もいれば、リスクを負わずに確実に少しでも利益を積み重ねたいという人もいます。上記で出てきた運用方法をリスク別に分類すると以下の通りです。
【ハイリスク・ハイリターン】
- FX
- 株式投資
- 不動産投資
FXや株式投資は、価格変動にうまく合わせることができると、大きな利益が期待できます。一方で、価格変動に影響を与える地政学的リスクなどと常に隣り合わせであるため、判断を誤ると大きな損失を出してしまうリスクを抱えているので注意が必要です。
不動産投資は、入居者の需要に合わせることができると、10%程度の安定した利回りが期待できます。一方で、家賃収入に影響を与える空室のリスクなどと常に隣り合わせであるため、判断を誤るとローン返済に追われてしまうリスクを抱えているので注意が必要です。
【ローリスク・ローリターン】
- 預貯金
- 債券
預貯金は、得られる利益が少ない一方で、確実に利益を得ることができるほか、金融機関が破綻しても一般的な預金(普通預金・定期預金)は、預金保険機構が1,000万円と利息まで保証(1金融機関あたり)してくれます。
債権は、預貯金よりも得られる利益が多いものの、預貯金のような元本保証はありません。しかし、国債は国が破綻しない限り、社債は会社が破綻しない限り元本割れを起こすことがないので、ローリスクの運用方法と言えるでしょう。
【その他】
- 投資信託
- ソーシャルレンディング
投資信託は、ハイリスク・ハイリターンの株式投資がメインかローリスク・ローリターンの債権がメインかで異なります。また、ソーシャルレンディングという企業融資も、各企業でリスクやリターンが異なります。同じ運用方法の中でも、リスクとリターンが異なるため、自分の目的に合わせやすいと言えるでしょう。
資産運用の種類別特徴
資産運用の必要投資額やリスク・リターンを比較して、いくつか候補が決まった人もいるのではないでしょうか?
候補の中からより自分に合った運用方法を選ぶために、資産運用の種類別の特徴について見ていきましょう。
預貯金
メガバンクの金利は0.001%と低金利の状態が続いていますが、ネットバンクなどの中にはキャンペーンで金利を0.1%以上 に設定しているところもあります。
元本保証が付くのは他の資産運用にないメリットであるため、老後資金など確実に資産を増やしたい人に適している運用方法と言えるでしょう。
債権
個人が直接投資できる債権は、個人向け国債と個人向け社債の2種類です。個人向け国債は最低金利が0.05%と保証されているため、長期的な運用に向いていると言えます。
個人向け社債はまとまった資金が必要になりますが、社債を発行している企業によっては数%の利息が付くこともあります。
どちらも元本保証は付いていないものの、国債は国、社債は上場企業が発行していることが多いため、より多く確実に資産を増やしたい人に適している運用方法と言えるでしょう。
株式投資
株式投資は、株式の売買による利益を狙うほか、長期保有で配当金や株主優待を狙うこともできます。
大きな利益を狙うことが期待できますが、取引時間が平日の9時から15時までであるため、日中働いているサラリーマンは積極的に取引を行いにくいです。
また、業績といった内部要因のほか、地政学的リスクといった外部要因の影響も受けるため、経験と知識が必要になる運用方法と言えるでしょう。
FX
FXは、通貨の売買による利益を狙うほか、スワップポイントという通貨間の金利差による利益を狙うこともできます。
また、レバレッジを効かせることによって資金以上の取引ができるため、少ない自己資金を効率良く増やすことができます。
土日を除いて24時間取引ができるので、日中働いているサラリーマンも取引を行いやすい一方、株式投資と同様、外部要因の影響も受けるため、経験と知識が必要になる運用方法と言えるでしょう。
投資信託
投資信託は、資産運用のプロに資産を預けて代わりに運用を行ってもらうため、資産運用の時間を確保できない人や資産運用の初心者に適しています。
国内や国外の様々な株式や債券を運用することで大きな利益が期待できる一方、手数料が多くかかるため、十分に利益が確保できる商品を選ぶ必要があると言えるでしょう。
不動産投資
不動産投資は、資産運用の中でも唯一金融機関から融資を受けることができるため、資金が少ない場合でも大きな利益を得ることが期待できます。また、不動産の管理は不動産会社に任せるため、資産運用の時間を確保できない人や資産運用の初心者に適しています。
しかし、空き部屋などの空室のリスク、地震や火災などの災害のリスクと隣り合わせなので、ローン返済や資産運用の計画が重要になると言えるでしょう。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、融資の仲介を行っている業者が投資家と企業を結び付けます。各企業で利回りが異なりますが、5%程度の企業が多く、融資後は償還日を待つだけなので、資産運用の時間を確保できない人や資産運用の初心者に適しています。
しかし、ソーシャルレンディングは未上場企業が融資の募集を行っていることが多いため、社債よりもリスクが高いと言えるでしょう。
目的に合わせて運用方法を選択
資産運用を行う人には、「生活資金の足し」「子供の教育資金」「老後の生活資金」といったように、それぞれの目的があります。
「生活資金の足し」が資産運用の目的の場合には、ある程度のリスクを負っても問題ないと言えますが、「子供の教育資金」や「老後の生活資金」が目的の場合には、リスクを負って失うようなことになると、目的が達成できなくなるので注意が必要です。
どんな目的で資産運用を行おうとしているのか明確にしてから、自分に合った運用方法を選ぶことが重要と言えるでしょう。
まとめ
資産運用は様々な種類がありますが、それぞれ必要投資額やリスクとリターンが異なっています。また、人によって資産運用の目的もそれぞれ異なっています。
資産運用を行う際には、準備できる自己資金の額や資産運用の目的に合わせて運用方法を選ぶのが基本です。
少しでも資産運用で資産を増やしたいからと言って、生活資金にまで手を付けてしまうと、資金が拘束されて必要な時に使うことができないだけでなく、場合によっては生活資金を失ってしまうことになります。あくまでも余裕資金の範囲内で資産運用を行うようにしましょう。
~プロフィール~
矢野翔一
関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。