クラウドファンディングの一種であるソーシャルレンディングが日本に登場してから10年が過ぎました。ソーシャルレンディングとはなにか?と調べると、「インターネットを通じて貸し手と借り手を結びつけるサービス」と説明されており、投資家のみなさんもそのような認識を持っていることでしょう。

しかし、実際には貸し手と借り手の間には事業者をはさんでおり、融資を行うのは投資家ではありません。このような業態は実は日本独特のものであり、世界基準ではありません。今回は、日本に先立ってソーシャルレンディングが普及した海外とマーケットや市場規模、営業形態の違いを比較してみましょう。

日本と海外のマーケットの違い

世界的な盛り上がりを見せるソーシャルレンディングですが、日本と海外ではマーケットが異なります。それぞれの国の事情やニーズに合わせて成長し、確立してきたマーケットにはどのような違いがあるのか見てみましょう。

欧米

世界に先駆け、一足早くソーシャルレンディングが発展してきた欧米諸国では、個人間融資が中心です。個人間融資はP2Pレンディング(peer to peer lending)ともいわれ、peerとは仲間の意味です。

個人間融資というと、「お金を借りたくても借りられない、訳ありの人が利用する」というようなマイナスイメージを抱く人もいるかもしれませんが、実際には国の様々な制度や慣習が関係しており、生活に密着した理由で合理的に利用している人が大半だといえます。

例えば出産費用の場合、米国には日本の出産一時金のような制度がないため、出産費用のローンなどを組むことがあります。しかし、審査を受けるには時間も手間もかかって面倒なため、返済能力に問題のない人はソーシャルレンディングを通して貸し手を探した方が圧倒的に楽になります。

その他にも、大学卒業後の留学費用の工面などに使われるケースもあります。卒業時、既に就職は決まっていて返済能力に問題がない場合、ソーシャルレンディングを利用すればスピーディーに留学の準備ができるでしょう。このように、割合としてはまだまだ個人間融資が圧倒的に多いですが、最近では不動産ローンや自動車ローンなどの分野にも拡大しており、今後の動向が注目されています。

中国

欧米を追いかける形でソーシャルレンディング市場が急成長したのが中国です。
中国でのソーシャルレンディングといえば、法人向け融資が一般的です。その背景としては、近年の中国の著しい経済発展があります。資本主義経済を見本に経済発展を遂げた中国ですが、銀行制度は共産主義国家の厳しい規制の下にあり、融資機能が追いついていませんでした。そのため、中小企業の資金需要に応じることができない状況を受け、ソーシャルレンディングの法人向け融資が一気に中国国内に広まったようです。
しかし、現在のところ中国のソーシャルレンディング事業者のレベルはピンキリで、投資家の資金を持ち逃げする事件が発生するなど問題になっています。

日本

2008年に日本で最初にソーシャルレンディング事業を開始したmaneoも、当初は欧米同様個人向け融資からスタートしました。しかし、利用者数が伸び悩んだことや、多数の返済延滞の発生を受け、2011年に個人向け融資事業からは撤退しています。
現在日本国内のソーシャルレンディングでは、法人向け融資、特に不動産融資が中心となっています。欧米や中国ではあまりメジャーではない不動産融資が伸びた理由としては、2000年代に入ってからの金融危機やリーマンショックの影響で、不動産に融資できる金融機関が激減してしまったことが挙げられます。

かつてはノンバンクが不動産融資を支えていましたが、そのノンバンクのほとんどが銀行系列に入ったことで、既存の金融機関だけでは不動産の資金需要に対応できなくなったようです。このようなタイミングでソーシャルレンディング市場が立ち上がったことが、今日、日本のソーシャルレンディング業界における右肩上がりの成長を遂げる下地となりました。

お金

米国と日本の市場規模の違い

ソーシャルレンディングは世界各国でマーケットが異なるだけでなく、市場規模にも大きな開きがあります。ここでは、米国と日本の市場規模の違いを比較してみましょう。

米国

日本より2年早くソーシャルレンディングサービスが開始された米国では、2015年における市場規模が約25,000億円に達しています。
投資家と資金需要者のマッチングが、銀行などの金融機関よりも低コストで、より低い金利で融資可能であることが、ソーシャルレンディング業界に競争力をもたらしています。
また、レンディングクラブというソーシャルレンディング専業での上場企業も現れており、ソーシャルレンディング先進国として着々と成長を続けています。
調査会社Infiniti Researchのレポート出版部門technavioによると、2020年時点においても米国がソーシャルレンディングの最大市場であり、南北アメリカ地域で世界全体の45%のシェアを占めると予想されています。

参考:technavio

日本

一方、日本の2017年におけるソーシャルレンディングの市場規模は1,316億円です。前年2016年の533億円と比較すると2.5倍の成長を見せているものの、日米間での市場規模の差はまだ20倍以上あります。
米国での市場規模から考えて、日本の市場拡大の余地も十分にあるといえるでしょう。

バランスシートレンダーとマーケットプレイスレンダー

米国と日本のソーシャルレンディングサービスの違いを知るには、営業形態の違いから理解する必要があります。日本でのソーシャルレンディングは、実は世界基準とは少し異なるので、ここで解説します。

日本のソーシャルレンディングはバランスシートレンダー

日本では、融資をソーシャルレンディング事業者が自ら行いますが、このような業態をバランスシートレンダーと呼びます。
事業者が融資を行う、といっても融資資金自体は事業者が用意するのではなく、個人投資家から出資を受けて賄います。バランスシートレンダーは利息収入の一部を利益として受け取り、残りを投資家の利益として分配します。
このような業態になったのは、日本の貸金業法の規制により、投資家本人が貸し手になれないためです。各事業者が貸金業の資格を持ち仲介を行うことで、日本のソーシャルレンディングは機能しているのです。

海外のメインストリームはマーケットプレイスレンダー

普段日本のソーシャルレンディングで投資している投資家のみなさんは、上記の仕組みに馴染みがあることと思いますが、海外ではマーケットプレイスレンダーという別の業態が主流です。

マーケットプレイスレンダーでは、貸し手と借り手を結びつけるサービスを提供するだけで、事業者は融資を行いません。事業者の主な仕事は、市場を用意することと、貸し手を審査して格づけすること、格づけされたローン債権を投資家に販売することです。海外には日本の貸金業法のような規制がないので、貸し手が直接投資家となることができるのです。
では、事業者はどこから利益を得るのかというと、貸し手と借り手の両方から手数料を受け取ります。個人間融資である性質上、日本のソーシャルレンディングとは違って、借り手の情報が詳しく投資家に開示されるという特徴があります。

ビル

日本のソーシャルレンディングは発展途上

歴史の浅いソーシャルレンディングは世界各国が成長段階の分野ですが、もちろん日本も発展途上です。今後、国内のソーシャルレンディング業界はどのように拡大していくと考えられているのか、現状を踏まえて確認してみましょう。

今日までのソーシャルレンディング

日本の業界最大手のmaneoがサービスを開始したのが2008年。そこから徐々に事業者が増え、ソーシャルレンディング業界が形になってきたのが2014年です。それまでは一部の資産運用に詳しい人だけが知っている存在で、認知度としては高くありませんでした。

しかし、2016年頃からクラウドファンディングと共に各メディアで取り上げられる機会が増え、次第に投資商品として認知されるようになったのです。広く世間に知られるようになったことで、20186月には、金融庁から貸出先の名前を明示するよう改善指導が入ったり、不適切な運用をしていた事業者が行政処分を下されたりといった動きも出てきています。
このように現在のソーシャルレンディングを取り巻く環境は、運用そのものだけでなく、法整備や安全性の面においてもまだまだ未熟です。収益を生み出すには自分自身でのリスク管理が鍵であるといえるでしょう。

今後の展開

現状では不動産融資がメインの日本ですが、海外案件や再生エネルギー案件などを扱う事業者も増えてきました。
また、購入型クラウドファンディングで知られるCAMPFIRE20177月よりソーシャルレンディングに参入したことも話題になりました。同ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングプラットフォームであるCAMPFIREで、2017728日以降に資金調達に成功した企業を対象とし、100万円という融資上限が設定されているのが特徴です。これは、クラウドファンディングにおける支援を点数化したものを与信材料の1つとする「評価型与信モデル」で、日本で初めて採用されました。
このように、日本初の営業形態を積極的に発信する、魅力的な事業者が今後も参入してくることが予想されます。将来的には米国同様ソーシャルレンディング専業での上場企業の登場も期待できるでしょう。

ますます成長するソーシャルレンディング市場

短期間で急速な発展を遂げてきたソーシャルレンディングですが、未だ基盤が固まっているとはいえません。この先、業界団体の発足や、投資家への情報開示などが行われたら、ソーシャルレンディングはよりクリアになり、安全性と収益性を兼ね備えた投資商品となるでしょう。一度は撤退した個人間融資が見直され、さらなる市場拡大が実現する日も近いかもしれません。

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